一番のラーメンとは ('03/11/21)
 出来はどうであれ、ラーメンサイトを運営していると
『一番美味しいラーメン屋さんはドコですか?』という質問をよく受ける。

 これほど回答に苦慮する質問はない。
好きなラーメン屋さんはたくさんある。しかしコレに順位をつけたり、まして一番美味しいお店を挙げることなどムリである。

 僕はこの質問をされた場合、逆にこう聞き返す事にしている。
『ではアナタの一番スキな曲を一曲挙げてください』
訊かれると恐らく誰しも言葉に詰まるだろう。

 例えばこの質問が『好きなアーチストを一人選べ』だったら簡単に挙げることができる。

 しかし、一番好きな“曲”を挙げろというと、案外難しい。
挙げたとしてもそれは“いま”好きな曲であり“いま”聴きたい曲である。
聴きたい音楽は、その日、その時の精神状態、環境、体調により選択が大きく左右されることは皆さんも理解していただけるだろう。
“いま”聴きたい曲を挙げても、明日には、いや数時間後には、違う曲を挙げるかもしれないということだ。

 ラーメンと音楽はよく似ている。
“いま”食べたいラーメンはある。しかし明日同じ店のものを食べたいかというと必ずしもそうではない。

 だから僕はラーメンの質問を受けると、音楽を例に挙げ『答える事の難しさ』を理解してもらう事にしている。

 僕の中では好きなラーメン(食べたいラーメン)は目まぐるしく変動する。
いま食べたいラーメンが僕の中ではイチバンだ。しかしそれを伝えるメールを相手が見る頃にはきっと違ったラーメンを食べたくなっているはずだ。
 ウソではないが結果的にウソになってしまう。そんな無責任な事を伝えることは出来ない、だから答える事が出来ない。…ということをご理解願いたい。

 話は変わるが、僕はこれまで大小4回の引越しをしている。
その先々には必ず美味しいラーメン屋さんがある。それも複数件。
決して美味しいラーメン屋のある土地を狙って近所に越すわけではなく、不思議と近所を歩けばあるのだ。

 …逆に言えば、僕にとってラーメンは極めてストライクゾーンの広い食べ物であり、ある一定の水準を保っていれば美味しいと感じる事のできる手軽な食事なのである。

 『手軽』と書いたが、ラーメンには『手軽さ』を忘れてはならない。
美味しいからといって時間を掛けて遠くまで出向いたり、行列の店に並んだりと、それはそれで良いと思うのだが、果たして『手軽さ』という側面から考えると如何なものか?
 引っ越す先々に美味しいラーメン屋さんに出くわすというのは、僕の中のラーメンに対する基本的な姿勢=“手軽さ”が、そうさせているのかもしれない。
 『近所にある、お気に入りのラーメン屋さん』
…なんだかんだ言っても結局これが、私やアナタにとって『一番のラーメン屋さん』なのではないだろうか?
僕はそう思う。それでいいと思う。